特定技能は、在留資格の一つとして日本国内における人手不足解消のために特定産業として認められた分野に対して、特定技能外国人を受け入れることができます。
特定技能の分野は16分野となっています。どの分野も深刻な人手不足という問題を抱えており、その解決策の一つとして外国人を雇っています。
深刻な人手不足の分野として「工業製品製造業」があり、この分野はさらに10区分に分けられています。
本記事では、工場製品製造業分野の機械金属加工区分に焦点をあて解説していきます。
目次:
1.特定技能「工業製品製造分野」とは
工業製品製造分野の機械金属加工区分を解説する前に、特定技能16分野の一つである工業製品製造分野について確認していきましょう。
1-1.特定技能とは
特定技能は、2019年4月に創設された在留資格の一つです。国内において人材確保が困難な分野を対象に一定の専門性や技術を有する外国人を受け入れることで、人手不足の解消をはかっています。
現在「特定産業」として認められている分野は16分野となっています。
①介護
②ビルクリーニング
③工業製品製造(旧 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)
④建設
⑤造船・舶用工業
⑥自動車整備
⑦航空
⑧宿泊
⑨農業
⑩漁業
⑪飲食料品製造業
⑫外食業
⑬自動車運送業
⑭鉄道
⑮林業
⑯木材産業
1-2.特定技能の種類
特定技能は有する技術や知識によって1号と2号に分けられます。
また、分野によっても特定技能1号のみの分野と、1号と2号どちらも認められている分野があります。
本記事で解説する工業製品製造分野の機械金属加工区分は、1号と2号どちらも認められています。
特定技能1号と2号では、技術水準や知識の他に待遇も異なるのです。
【特定技能1号】
在留期間:4ヶ月、6ヶ月、1年ごとの更新 上限は通算5年
技能水準:相当程度の知識と経験を有する
日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を有する(試験で確認)
転職の可否:可能
家族の帯同:不可
支援計画:必須
【特定技能2号】
在留期間:6ヶ月、1年、3年ごとの更新 更新の上限なし
技能水準:熟練した技能を有する
日本語能力水準:試験での確認不要
転職の可否:可能
家族の帯同:可能
永住権の取得:可能
支援計画:不要
上述の通り、在留期間や家族の帯同、移住権の取得などさまざまな面で違いがあるのがわかるでしょう。
1-3.工業製品製造分野の詳細
工業製品製造分野は、「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」の名称となっていました。
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野では従事可能な業務が限られていましたが、工場製品製造分野と名称が変更になってから、さらに多くの業種・業務区分での従事が可能となっています。
現在では、以下の業務区分での従事が可能です。
・機械金属加工区分
・電気電子機器組み立て区分
・金属表面処理区分
・紙器・段ボール箱製造区分
・コンクリート製品製造区分
・RPF製造区分
・陶磁器製品製造区分
・印刷・製本区分
・紡織製品製造区分
・縫製区分
工業製品製造分野の人手不足は深刻なものとされており、令和6年以降の受け入れ予定人数は173,300人となっています。
人手不足の背景としては、若年層の就業者数の減少と、高齢化・離職率が挙げられます。工業製品製造分野で働いている人たちのなかには、スキルアップが望めない職場であることや、それに伴い給与が上がらないまま定年を迎えてしまうのではないかといった不安があるようです。
そのほかにも、きつい・汚い・危険といった3Kのイメージも原因の一つです。これらを受け、企業のイメージアップや働きやすい職場環境作りに力を入れているところも少なくありません。
2.特定技能 工業製品製造分野 機械金属加工区分とは
機械金属加工区分の概要は以下の通りとなっています。
2-1.特定技能1号 工業製品製造業分野 機械金属加工区分
【分野・区分の概要】
指導者の指示を理解し、または自らの判断により、素形材製品や産業機械等の製造工程の作業に従事
【従事する主な業務】
鋳造/鍛造/ダイカスト/機械加工/金属プレス加工/鉄工/工場板金/仕上げ/プラスチック成形/機械検査/機械保全/電気機器組み立て/塗装/溶接/工場包装/強化プラスチック成形/金属熱処理業
【想定される関連業務】
当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えない。
関連業務にあたり得るものとして、次が想定される。
・原材料・部品の調達・搬送作業
・各職種の前後工程作業
・クレーンフォークリフト等運転作業
・清掃・保守管理作業
※専ら関連業務に従事することは認められない。
参考・引用:出入国管理局 特定技能1号の各分野の仕事内容
2-2.特定技能2号 工業製品製造業分野 機械金属加工区分
【分野・区分の概要】
複数の技能者を指導しながら、素形材製品や産業機械等の製造工程の作業に従事し、工程を管理
【従事する主な業務】
鋳造/鍛造/ダイカスト/機械加工/金属プレス加工/鉄工/工場板金/仕上げ/プラスチック成形/機械検査/機械保全/電気機器組み立て/塗装/溶接/工場包装/強化プラスチック成形/金属熱処理業
【想定される関連業務】
当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えない。
関連業務にあたり得るものとして、次が想定される。
・原材料・部品の調達・搬送作業
・各職種の前後工程作業
・クレーンフォークリフト等運転作業
・清掃・保守管理作業
※専ら関連業務に従事することは認められない。
参考・引用:出入国管理局 特定技能2号の各分野の仕事内容
3.特定技能外国人を受け入れるには
工業製品製造分野「機械金属加工区分」で特定技能外国人を受け入れるには2つの受け入れルートが存在します。
一つは、技能試験である「製造分野特定技能1号評価試験」と「日本語試験」両方の試験を合格する方法です。
もう一つは、技能実習からの移行ルートになります。
3-1.製造分野特定技能1号評価試験
製造分野の特定技能1号評価試験の実施概要は以下の通りとなっています。
・言語:日本語
・試験水準:特定技能1号の試験免除となる技能実習2号修了者が受験する技能検定3号試験程度を基準
・受験資格:原則として、試験日当日において、満17歳以上の外国人とし、試験に合格した場合に日本国内で就業する意思のある者
・評価試験内容:学科試験は問題文の内容が正しいか間違っているかを選ぶ問題です。実技試験は実際の作業工程や材料に関する内容を読んで正しい答えを選ぶ試験となっています。
機械金属加工区分のサンプル問題では、主な出題範囲は以下の通りとなっています。
【学科】
製造分野全般:「安全衛生、品質管理」・「一般教養」・「法令、規格、器具」など(10問)
機械金属加工区分全般:「安全衛生、品質管理」・「機械工作法、機械、器具」・「材料」・「検査・測定」・「製図」など(20問)
【実技】
安全衛生:2問
品質管理:2問
検査:2問
測定:2問
製図:2問
3-2.日本語試験
特定技能1号で求められる日本語試験のレベルは、日本国際教育支援協会(JLPT)のN4以上もしくは、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)となります。
これらの基準は、「日本語である程度の日常会話ができる」もしくは「生活に支障なく話せる」、「業務上で必要な日本語能力がある」を満たせるレベルとされています。
3-3.技能実習2号を良好に修了する
技能実習2号を良好に修了した場合、必要な技能と日本語能力の各水準を満たしているものとされます。
そのため、技能試験と日本語能力試験が免除されます。
3-4.企業側の要件
特定技能外国人を受け入れるためには、企業側でも必要な要件が求められます。
①製造業特定技能外国人材受け入れ協議・連絡会への入会
②特定技能外国人を受け入れる事業所の売り上げは、製造業分野に掲げられた日本標準産業分類に該当するか
③特定技能外国人が行う作業内容は対象業務か
④自社が支援計画の適切な実施を確保するための基準を満たしているか
これらを満たしていなければなりません。
4.工業製品製造業分野 特定技能2号について
金属加工区分は特定技能2号も該当する区分となります。特定技能2号では、実務経験による熟練した技能が求められるほか、現場の作業者を束ねて指導・監督ができる存在となります。
特定技能2号を取得するためには、特定技能 2号評価試験を合格するか、技能検定1級を取得するかのどちらかです。
4-1.特定技能2号評価試験に合格するルート
特定技能2号の在留資格を取得するための必要要件として、以下の3つすべてを満たす必要があります。
・ビジネス・キャリア検定3級取得
生産管理プランニング区分・生産管理オペレーション区分のいずれか
・製造分野特定技能2号評価試験の合格
機械金属加工区分、電気電子機器組み立て区分、金属表面処理区分のいずれか
技能水準として、上級技能者のためである試験の技能検定1級の合格水準と同等の基準
・日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有すること
以上が2号評価試験の申込時に必要な条件となります。
【製造分野特定技能2号評価試験 機械金属加工区分の概要】
試験時間は60分、問題数20問、合格基準は60%の正解となっています。
出題範囲として、
・安全衛生:安全衛生管理が具体的にできること(4問)
・品質管理:品質管理手法の活用ができること(4問)
・検査:機械金属関連の作業について、検査ができること(4問)
・測定:機械金属関連の作業について、測定ができること(4問)
・製図:機械金属関連の作業について、製図ができること(4問)
の計20問とされています。(配分は目安です)
4-2.技能検定1級を取得するルート
技能検定から特定技能2号の在留資格を取得するためには、以下の2つをすべて満たさなくてはなりません。
・技能検定1級取得
鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、めっき、アルミニウム陽極酸化処理、仕上げ、機械検査、機械保全、電子機器組立て、電気機器組立て、プリント配線板製造、プラスチック成形、塗装、工業包装のいずれか
・日本国内に拠点を持つ企業の製造業の現場における3年以上の実務経験を有すること
出入国在留管理庁への届出の際に必要です。
5.機械金属加工区分で積極的に特定技能外国人の受け入れを
特定技能 工業製品製造業分野 機械金属加工区分は、特定技能1号だけではなく、特定技能2号の在留資格も認められている区分です。
そのため、外国人材がキャリアアップしやすい区分とも言えるでしょう。
技能実習で良好に修了した外国人が、特定技能1号へ移行し、技能実習時以外の技能を身につけ多能工となり経験を積むことができます。
さらに、特定技能2号では、複数の熟練した技能を身につけ熟練工として複数作業者のリーダーとして、いずれは製造現場のマネジメント層や工場長として、現場を支える存在になることもできるでしょう。
特定技能2号では、在留期間の上限がなくなり、家族の帯同も要件を満たしていれば可能です。また、受入人数の上限もありません。
ゆくゆくは、自社を支える人材として、今から育成していくのも良いでしょう。
特定技能や技能実習など在留資格についての詳細や、受け入れに必要な手続きなど、わからない点や相談したいことがある場合は、ぜひご連絡ください!
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