製造業分野(工業製品製造業分野)は、従事できる業種・業務区分が細かく分かれています。
そのなかの一つに「縫製区分」があります。
縫製区分は、新たに追加された業務区分となっています。今までは、技能実習生が物作りの一端を支えていたという現実もあり、縫製業界から特定技能対象区分に追加されたことで、喜びの声も上がっているそうです。
本記事では、外国人人材が活躍する特定技能 製造分野(工業製品製造業分野)縫製区分について焦点をあてて解説していきます。
目次:
1.特定技能 工業製品製造業分野とは
特定技能「工業製品製造業分野」は、「製造業分野」とも言われています。この分野は、以前まで「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」という名称でした。しかし令和6年より、分野名が変更となり、さらに幅広い業種が追加されるようになったのです。
1-1.特定技能とは
特定技能は2019年に創設された就労可能な在留資格の一つです。
日本国内において、深刻な人手不足を抱える「特定産業」に対して、人手不足を解消することを目的とした制度になっています。
特定産業や特定技能の分野として、特定技能外国人を雇用することが可能となっています。
現時点で特定技能は16分野となっています。分野の一覧は以下の通りです。
①介護
②ビルクリーニング
③工業製品製造(旧 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)
④建設
⑤造船・舶用工業
⑥自動車整備
⑦航空
⑧宿泊
⑨農業
⑩漁業
⑪飲食料品製造業
⑫外食業
⑬自動車運送業
⑭鉄道
⑮林業
⑯木材産業
1-2.工業製品製造業分野の区分
工業製品製造業分野の一つとして縫製区分があります。この区分は全部で10となっており、従事できる業務内容が異なります。
・機械金属加工区分
・電気電子機器組み立て区分
・金属表面処理区分
・紙器・段ボール箱製造区分
・コンクリート製品製造区分
・RPF製造区分
・陶磁器製品製造区分
・印刷・製本区分
・紡織製品製造区分
・縫製区分
このなかでも特定技能1号のみの区分と特定技能2号も認められている区分があります。縫製区分は特定技能1号のみとなっており、特定技能2号が認められているのは、「機械金属加工」・「電気電子機器組立て」・「金属表面処理」の3つです。
1-3.特定技能1号と2号の違い
特定技能1号と2号では、技能水準の他にも在留期間や永住権の取得などの違いがあります。
【特定技能1号】
在留期間:4ヶ月、6ヶ月、1年ごとの更新 上限は通算5年
技能水準:相当程度の知識と経験を有する
日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を有する(試験で確認)
転職の可否:可能
家族の帯同:不可
支援計画:必須
【特定技能2号】
在留期間:6ヶ月、1年、3年ごとの更新 更新の上限なし
技能水準:熟練した技能を有する
日本語能力水準:試験での確認不要
転職の可否:可能
家族の帯同:可能
永住権の取得:可能
支援計画:不要
2.特定技能 工業製品製造業分野 縫製区分
縫製区分は特定技能1号のみとなっています。縫製区分の概要は以下の通りです。
【分野・区分の概要】
指導者の指示を理解し、または自らの判断により、縫製工程の作業に従事
【従事する主な業務】
婦人子供服製造/紳士服製造/下着類製造/寝具製造/帆布製品製造/布はく縫製/座席シート縫製
【想定される関連業務】
当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事することは差し支えない。
関連業務に当たり得るものとして、次が想定される。
・原材料・部品の調達・搬送作業
・各職種の前後工程作業
・クレーン・フォークリフト等運転作業
・清掃・保守管理作業
※専ら関連業務に従事することは認められない。
参考・引用:出入国在留管理庁 特定技能1号の各分野の仕事内容
2-1.縫製区分の詳細
縫製区分は、試験に合格して特定技能1号を取得するルートか、技能実習からの移行ルートが存在します。
試験合格ルートでは、製造分野特定技能1号評価試験と日本語試験の両方を合格する必要があります。
製造分野特定技能1号評価試験は、
・言語:日本語
・試験水準:特定技能1号の試験免除となる技能実習2号修了者が受験する技能検定3号試験程度を基準
・受験資格:原則として、試験日当日において、満17歳以上の外国人とし、試験に合格した場合に日本国内で就業する意思のある者
・評価試験内容:学科試験は問題文の内容が正しいか間違っているかを選ぶ問題です。実技試験は実際の作業工程や材料に関する内容を読んで正しい答えを選ぶ試験となっています。
以上が概要です。
日本語試験では、国際交流基金日本語基礎テストもしくは日本語能力試験(N4以上)の合格が条件です。
技能実習からのルートでは、技能実習2号移行対象職種であること且つ、技能実習2号を良好に修了していることが条件となります。
技能実習2号の移行対象職種として、
・婦人子供服製造
・紳士服製造
・下着類製造
・寝具製造
・帆布製品製造
・布はく縫製
・座席シート縫製
以上が縫製区分となります。
例えば、婦人子供服製造の技能実習2号修了者であれば、特定技能1号(縫製)へ移行した場合、婦人子供服製造にだけではなく、紳士服の製造や下着類の製造、布はくの製造などの縫製業務に従事することが可能です。
隣接業種として、
・紡織運転
・織布運転
・染色
・ニット製品製造
・たて編ニット生地製造
・カーペット製造
は紡織製品製造区分となります。
3.製造業「縫製区分」の特定技能外国人を受け入れるための企業側要件
特定技能外国人を受け入れるためには、企業側も要件を満たす必要があります。企業側の要件は、「縫製区分」に限定したものではなく特定技能の各分野にもそれぞれ要件が存在します。
「縫製区分」は工業製品製造業分野となるため、工業製品製造業分野として必要な要件をまとめました。
3-1.製造業特定技能外国人材受け入れ協議・連絡会への入会
製造業特定技能外国人材受け入れ協議・連絡会の目的として、
「構成員相互の連絡及び連携の緊密化を図るとともに、構成員に対する特定技能の在留資格に係る制度の趣旨、外国人材受入れに関する施策などの情報及び優良事例の周知並びに特定技能の在留資格に係る課題の把握及び対応方策についての検討及び協議を行うことにより、特定技能外国人の適正な受入れ及び保護並びに特定技能外国人の受入れ状況に係る地域差の発生の抑止に貢献すること」
とされています。
協議・連絡事項として、
①外国人の受け入れ状況及び課題、並びに対応方策
②不正行為の抑止に資する取組・防止策
③その他外国人材の適切な受け入れ及び外国人の保護に資する情報・取組
などがあります。
協議・連絡会は特定技能外国人を受け入れるために必要な存在となっています。協議・連絡会を通じて、特定技能外国人にとってより良い就業環境を提供し人手不足解消に向けた施策を講じることができるでしょう。
協議会への加入は在留申請前に入会する必要があります。入会方法は以下の通りです。
・申請書の作成
受け入れ事業所の詳細や、業務内容・職種に関する情報を記載
・必要書類の準備
登記事項証明書・事業計画書・労働条件通知書・製造品の出荷実績
これらを準備した後、オンラインでの提出か紙での提出により申請します。
3-2.事業所の売り上げが日本標準産業分類に該当している
特定技能外国人を受け入れる事業所が、製造業分野に掲げられた日本標準産業分類に該当していることが条件となります。
製造業分野に該当する製品を製造する業務にのみ従事することが可能となっています。該当しない場合は、前述の製造業特定技能外国人材受け入れ協議・連絡会への加入が認められません。
3-3.作業内容が妥当であるか
特定技能外国人が従事する作業内容が対象業務かどうかも、企業側事業の該当性を確認する上で必須となっています。
作業内容が大幅に逸脱する可能性があったり、妥当ではないと判断されたりする場合は認められません。
3-4.支援計画の適切な実施の基準を満たしているかどうか
特定技能1号を有する外国人を受け入れるために、企業側は支援計画を立て、実施しなくてはなりません。
支援計画の内容として、
①事前ガイダンス
雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前または在留資格辺境許可申請前に、労働条件や活動内容、入国手続き、保証金徴収の有無等について、対面もしくはテレビ電話等で説明します。
②出入国する際の送迎
・入国時に空港等と事業所または住居への送迎
・帰国時に空谷の保安検査場までの送迎・同行
③住居確保・生活に必要な契約支援
・連帯保証人になる・社宅を提供する等
・銀行口座等の開設・携帯電話やライフラインの契約等を案内・各手続の補助
④生活オリエンテーション
円滑に社会生活を営めるよう日本のルールやマナー、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応等の説明
⑤公的手続等への同行
必要に応じ、住居地・社会保障・税などの手続きの同行、書類作成の補助
⑥日本語学習の機会の提供
日本語教室等の入学案内、日本語学習教材の情報提供等
⑦相談・苦情への対応
職場や生活上の相談・苦情等について、外国人が十分に理解することができる言語での対応、内容に応じた必要な助言や指導
⑧日本人との交流促進
自治会等の地域住民との交流の場や地域のお祭りなどの行事の案内や参加の補助等
⑨転職支援(人員整理等の場合)
受け入れ企業側の都合により、雇用契約を解除する場合の転職先を探す手伝いや、推薦状の作成等に加え、求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続きの情報提供
⑩定期的な面談・行政機関への通報
支援責任者等が外国人及びその上司等と定期的に面談し労働基準法違反等があれば通報する
が挙げられます。
4.縫製業界全体で制度を正しく活用
特定技能に縫製が追加されたことを受けて、縫製業界は喜びの声が多く上がっています。これは、縫製業界の多くの担い手が、外国人であるからです。
しかし、過去には制度を不正利用していた事業所もありました。給与や残業代が正しく支払われず、未払いのままというところもあります。宿舎も粗悪なもので、長時間の残業を強いられていた技能実習生も少なくありません。
この実情から他国ではさまざまな批判もありました。
縫製業界において、外国人はものづくりを支えてくれる大事な人材です。特定技能制度になったことで、環境や待遇が良くなり、技能実習から移行して働きたいと思ってくれる外国人のためにも、制度を正しく活用しさらに多くの外国人人材が働き手となって、縫製業界を支えてくれることを願っています。
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