特定技能外国人を受け入れるための要件として、各分野に設置されている「協議会」への加入が受け入れ企業に義務付けられています。
義務付けられていると言っても、実際にどのような活動をしているのか、加入方法や費用について知らないという方もいるでしょう。
本記事では、特定技能制度における協議会について解説していきます。
目次:
1.特定技能とは
特定技能制度の協議会について確認する前に、特定技能制度の概要について説明します。
特定技能は2019年4月に創設された在留資格です。深刻な人手不足解消を目的としており、人材確保が困難な分野を「特定産業」とし、特定産業分野に対して専門性や技術を有する外国人を雇い入れるための制度となっています。
当初は12分野でしたが、2024年3月に4分野が追加され現在は以下の16分野となっています。
①介護
②ビルクリーニング
③工業製品製造業
④建設
⑤造船・舶用工業
⑥自動車整備
⑦航空
⑧宿泊
⑨自動車運送業
⑩鉄道
⑪農業
⑫漁業
⑬飲食料品製造業
⑭外食業
⑮林業
⑯木材産業
1-1.特定技能1号
特定技能制度には1号と2号に分けられています。特定技能1号は前述の16分野が対象となっています。
1号と2号では技術水準や在留期間や条件が異なります。
特定技能1号の技能水準は、相当程度の知識または経験を必要とする技能となっています。
在留期間は通算で5年までとなっており、1年・6ヶ月・4ヶ月ごとの更新です。永住権の取得はできず、家族の帯同も不可となっています。特定技能1号では日本語能力試験も必須です。
1-2.特定技能2号
特定技能2号は1号よりさらに深い知識や経験が求められます。技能水準として、熟練した技能となっています。
在留期間は3年・1年・6ヶ月ごとの更新となっており、更新の上限はありません。また、要件を満たせば永住権の取得も可能となっており、家族の帯同も認められています。
特定技能1号と異なり、日本語能力試験は必要ありません。
現在特定技能2号で受け入れが可能な分野は以下の11分野となっています。
①ビルクリーニング
②工業製品製造業
③建設
④造船・舶用工業
⑤自動車整備
⑥航空
⑦宿泊
⑧農業
⑨漁業
⑩飲食料品製造業
⑪外食業
2.特定技能分野別協議会とは
特定技能における協議会の目的や活動はどのようなものなのでしょうか。
2-1.特定技能協議会の目的
特定技能協議会の目的は以下のとおりとなっています。
・特定技能制度の適切な運用を図るため、特定産業分野ごとに分野所管省庁が協議会を設置する。
・協議会においては、構成員の連携の緊密化を図り、各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受け入れられるよう制度や情報の周知、法令遵守の啓発、地域ごとの人手不足の状況を把握しての必要な対応等を行う。
適切な運用として、特定技能外国人が不当な条件下で働かされていないか、安全な環境で働けるように協議会が調査や指導を行うこともあります。
2-2.特定技能協議会の構成と活動内容
特定技能協議会の構成として、各分野の協議会に「分野所管省庁」、「受入機関」、「業界団体」、「その他」、「関係省庁(法務省、警察庁、外務省、厚生労働省)」です。
特定技能外国人を受け入れるすべての受入機関は協議会の構成員になることが必須とされています。
特定技能協議会は、産業分野別に管轄の省庁が異なります。細かい活動内容は異なってきますが、主な活動内容としては以下のとおりとなっています。
・特定技能外国人の受け入れに係る制度の趣旨や優良事例の周知
・特定技能所属機関等に対する法令遵守の啓発
・就業構造の変化や経済情勢の変化に関する情報の把握・分析
・地域別の人手不足の状況の把握・分析
・人手不足状況、受け入れ状況等を踏まえた大都市圏等への集中回避に係る対応策の検討・調整(特定地域への過度な集中が認められる場合の構成員に対する必要な要請等を含む)
・受け入れの円滑かつ適正な実施のために必要なその他の情報・課題等の共有・協議等 等)
参考・引用:法務省「特定技能における分野別の協議会について」
3.特定技能協議会の加入について
特定技能協議会は、特定技能外国人を受け入れるために必要な要件の一つとなっています。加入時期は、特定技能の在留資格申請前までに済ませなくてはなりません。
在留資格申請時に協議会の加入証明書を提出する必要があるからです。そのため、特定技能外国人の採用が決まったらすぐにでも協議会へ加入申請を行なってください。
3-1.特定技能協議会への加入要件
特定技能協議会への加入は、受け入れ企業が該当分野に属しているかどうかと必要書類を提出することで可能となっています。
協議会への加入要件は、各分野で異なります。
各分野所管省庁は以下のとおりです。
分野名 | 特定技能協議会名 | 分野所管省庁 |
介護 | 介護分野における特定技能協議会 | 厚生労働省 |
ビルクリーニング | ビルクリーニング分野における特定技能協議会 | 厚生労働省 |
工業製品製造業 | 製造業特定技能外国人受入れ協議・連絡会 | 経済産業省 |
建設 | 建設分野における特定技能協議会 | 国土交通省 |
造船・舶用工業 | 造船・舶用工業分野における特定技能協議会 | 国土交通省 |
自動車整備 | 自動車整備業分野における特定技能協議会 | 国土交通省 |
航空 | 航空分野における特定技能協議会 | 国土交通省 |
宿泊 | 宿泊分野における特定技能協議会 | 観光庁 |
自動車運送業 | 自動車運送業分野特定技能協議会(設置時期未定) | 国土交通省 |
鉄道 | 鉄道分野特定技能協議会 | 国土交通省 |
農業 | 農業分野における特定技能協議会 | 農林水産省 |
漁業 | 漁業分野における特定技能協議会 | 水産省 |
飲食料品製造業 | 食品産業特定技能協議会 | 農林水産省 |
外食業 | 食品産業特定技能協議会 | 農林水産省 |
林業 | 林業特定技能協議会 | 林野庁 |
木材産業 | 木材産業特定技能協議会 | 林野庁 |
3-2.特定技能協議会の加入費用
特定技能協議会の加入費用ですが、現時点では基本的に徴収していない分野が大半です。しかし、建設業分野は年会費が必要となっています。
年会費は正会員と賛助会員に分かれており、正会員の場合は年会費36万円とされており、賛助会員は企業及び建設関連団体だと年会費24万円となっています。
また、受け入れ負担金も月々かかり、1号特定技能外国人を1人受け入れる場合1ヶ月に12,500円支払う必要があります。
参考・引用:一般社団法人 建設技能人材機構
4.各分野別特定技能協議会の運営や取り組み状況
分野ごとの運営および取り組み状況は以下の通りとなっています。
分野名 | 運営や取り組み状況 |
介護 | 協議会の円滑な運営を図るため、運営委員会を設置。 運営委員会はH31から毎年度開催し、好事例の周知情報の共有を行う。 運営委員に対し、特定技能に関するトピックがあればメールで適宜情報発信も。 |
ビルクリーニング | 毎年協議会を開催し、技能評価試験の実施状況や業界の要望についての協議を行い、 ビルクリーニング分野の特定技能制度の適正な運営を図る。 |
工業製品製造業 | 令和元年から4年度までコロナ禍の状況も踏まえつつ合計9回の協議会を開催。 優良事例の共有や法令遵守の啓発を行う。 |
建設 | 特定技能所属機関が所属を義務付けているJACが協議会の構成員となっており、 当該法人より全機関への情報共有を徹底。区分統合の説明やJACから正会員団体が 実施する研修や講習への支援事業について説明がなされた。 |
造船・舶用工業 | 学識者や特定技能所属機関、登録支援機関等から構成されており、協議会では、 特定技能外国人の受け入れ状況や優良事例・違反事例の紹介やキャリアパスの事例 紹介を行う。 |
自動車整備 | 2022年10月末時点で11回の協議会を開催。自動車整備分野における特定技能制度の 運用状況を共有。 |
航空 | 【空港グランドハンドリング区分】 分野別協議会を5回実施。特定技能試験実施期間のHPに特定技能外国人の雇用を 希望する企業一覧を掲載。試験に合格した外国人と企業のマッチング支援を行う。 協議会加入済みの企業に対しマッチングイベントやジョブフェアのイベント情報の 共有を適宜実施。 【航空機整備区分】 分野別協議会を5回実施。 |
宿泊 | 特定技能外国人の受け入れ状況や優良事例の紹介、予算事業で実施している制度周知 セミナー等の報告を行う。 |
自動車運送業 | ーーー |
鉄道 | ーーー |
農業 | 規約に基づき農業特定技能協議会のもと、運営委員会および地域協議会を組織し、 共有する情報等協議会の運営に必要な事項を決定。 |
漁業 | 設置から、協議会や、幹事会、漁業分科会、養殖業分科会などを実施。 |
飲食料品製造業 | 四半期ごとに協議会運営委員会を実施。運営委員に対し最新のトピックの提供や 必要に応じ課題に対する意見を求めるなどの運営を行う。 |
外食業 | 四半期ごとに協議会運営委員会を実施。運営委員に対し特定技能に関する情報 提供を行うとともに必要に応じ課題に対して意見を求めている。 |
林業 | ーーー |
木材産業 | ーーー |
※自動車運送業、鉄道、林業、木材産業は2024年3月に追加されため、取り組み内容についての取りまとめは現在ありませんでした。
参考・引用:特定技能制度の分野所管省庁における取組状況
5.必要書類は事前に準備を
特定技能の在留資格を申請するために、受け入れ企業側が用意する書類もいくつか存在します。
特定技能外国人の受け入れを検討している場合は、事前の準備が不可欠です。
*会社概要に関する書類
会社概要を示す書類として、「所属期間概要書」・「登記事項証明書」(法務局)・「役員住民票の写し」(市区町村役所)が必要です。
*財務・コンプライアンスに関する書類
会社の財務状況や営業許可の確認に必要とされる書類です。未申告や申告漏れ、支払い遅延があった場合、在留資格の申請がおりない可能性もあるので注意してください。
「確定申告書・決済書の写し」・「労働保険料納付証明書」(労働局)・「社会保険料納入状況紹介回答票」(年金事務所)・「税務署納税証明書」(税務署)・「市町村納税証明書」(市区町村役所)・「営業許可証」(保健所または国土交通省、業種によって異なります)を準備してください。
*産業分野別に関する必要書類
「誓約書」・「協議会入会証」(加入協議会)・「受け入れ計画認定証の写し(建設業)」(国土交通大臣が発行)が必要です。
()内は取得場所です。
6.在留資格申請前に協議会へ加入を!
特定技能協議会は、特定技能外国人の受け入れ企業の加入が義務付けられています。分野別に設置されており、その分野の現状や情報の共有などを活動として行なっているため、特定技能制度についてやその分野の状況について詳しく知ることができます。
加入の時期は在留資格の申請前に行なってください。加入審査に時間がかかる場合もあるので、特定技能外国人の受け入れを検討している場合は早めの手続きが良いでしょう。
特定技能についてや、そのほか在留資格について詳しく知りたい、相談したいという場合はぜひご連絡ください!
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