特定産業分野は、国内で人材を確保することが難しい場合に、一定の能力を有する外国人を雇用することで人材確保を図るべき産業分野と定義されています。
人手不足が深刻な産業が「特定産業分野」として指定されるのです。
ビルクリーニング分野も、この特定産業分野に分類されています。
本記事では、ビルクリーニング分野の特定技能1号について詳しく解説していきます。
目次:
1.ビルクリーニング分野の現状
ビルクリーニング分野は近年人手不足が深刻化しています。原因はいくつか挙げられますが今後も人手不足が進むと予測されています。そのため、ビルクリーニング分野において、人手不足解消に向けた施策を講じています。
1-1.人手不足の原因
深刻化しているビルクリーニング分野の人手不足。原因として、以下が挙げられています。
・少子高齢化による労働力不足
・仕事のイメージ
・女性の社会進出
少子高齢化により、従事している労働者の年齢が年々上がっていき、平均年齢が50代を超えていると言われています。
また、仕事のイメージも肉体的に負担が多く休みも少ないのではないかといったイメージがあるため、なかなか人手が集まらないという問題も抱えています。
もともと、ビルクリーニングは、女性の比率が多い業界です。しかし、近年は女性の社会進出に伴い、他業種に流出してしまったため、労働力がさらに少なくなったとされています。
1-2.ビルクリーニング分野が抱える問題
ビルクリーニング分野は、人手不足の他にもさまざまな問題を抱えています。前述のとおり、平均年齢の上昇や仕事に関するイメージがそれほどよくないなどがあります。
平均年齢が上昇してしまうと、その年齢の労働者がリタイアした場合さらなる人手不足に発展しかねません。そのため、若手の労働者を確保する必要があるのです。
人手不足が深刻化してしまうと、一人一人への負担も多くなってしまい、より大変な職種というイメージが付いてしまいます。この悪循環を少しでも軽減するために、ビルクリーニング分野は「特定産業分野」に認定されました。
特定産業分野は、国内で人材を確保することが難しい場合に、一定の能力を持った外国人を雇用することで人材の確保を図るべき産業分野と定義されています。
ビルクリーニング分野は、国内だけでは人材確保が困難である分野として、外国人労働者を雇用するための制度である特定技能で雇うことが可能な分野になっています。
2.特定技能とは
特定産業分野であるビルクリーニングですが、特定産業分野では特定技能外国人を雇い入れることが可能です。
特定技能とはどのような制度なのか確認していきましょう。
2-1.特定技能の概要
特定技能は在留資格の一つです。就労ビザに分類される在留資格となっており、人手不足を解消を目的とされています。
現在の対象分野は16となっています。
2-2.特定技能16分野
16分野は以下の通りです。
①介護
②ビルクリーニング
③素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
④建設
⑤造船・舶用工業
⑥自動車整備
⑦航空
⑧宿泊
⑨農業
⑩漁業
⑪飲食料品製造業
⑫外食業
⑬自動車運送業
⑭鉄道
⑮林業
⑯木材産業
これだけの分野が、深刻な人手不足となっており人材確保のためにさまざまな施策をしたり、外国人を雇い入れたりしています。
特定技能は1号と2号に分かれており、1号より2号の方がより深い知識や経験が求められます。
2-3.特定技能1号と2号の違い
特定技能1号と2号では、在留できる期間や技能水準などが異なります。
・特定技能1号
在留期間:4ヶ月、6ヶ月、1年ごとの更新 上限は通算5年
技能水準:相当程度の知識と経験を有する
日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を有する(試験で確認)
転職の可否:可能
家族の帯同:不可
支援計画:必須
・特定技能2号
在留期間:6ヶ月、1年、3年ごとの更新 更新の上限なし
技能水準:熟練した技能を有する
日本語能力水準:試験での確認不要
転職の可否:可能
家族の帯同:可能
永住権の取得:可能
支援計画:不要
特定技能1号から2号への移行が可能となっており、2号へ移行すれば永住権の取得も可能となっています。
そのため、日本で永続的に働きたいと考える外国人や、働いてほしいと考える企業がマッチすれば、2号取得のためにサポートし長く働いてもらえるようにするのも良いでしょう。
3.ビルクリーニング分野特定技能の概要
ビルクリーニング分野において、特定技能外国人受け入れの趣旨と目的は、以下の通りとなっています。
”ビルクリーニング分野において深刻化する人手不足に対応するため、専門性・技術を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れることで、本分野の存続・発展を図り、持って我が国の形材・社会的基盤の持続可能性を維持する。”
人手不足解消のための施策として、特定技能制度がありますが、受け入れ見込み数についてもこの先どの程度必要になっていくのか想定された上で、決まっています。
3-1.ビルクリーニング分野においての受け入れ見込み数
ビルクリーニング分野では、令和6年度から5年間の受け入れ見込み数を最大で3万7,000人としています。令和10年度末までの受け入れ上限として運用することと定められており、この人数はさまざまな施策を行なった上で不足すると見込まれた数字です。
ビルクリーニング分野において、令和10年度には9万8,000人程度の人手不足が見込まれると言われています。人手不足が見込まれるなかで、清掃ロボットの導入をし段階的に生産性の向上を試み、さらに女性や高齢者への就職勧奨といった取り組みも行い人材確保を目指しています。
それでも不足するであろう見込み数が最大で3万7,000人なのです。この不足分を1号特定技能外国人の受け入れで補おうとしているのです。
3-2.特定技能1号で従事できる業務内容
ビルクリーニング分野で従事できる主たる業務内容は「建築物内部の清掃」です。日本人が通常従事することとなる関連業務への従事も可能とされています。関連業務は以下の通りとなっています。
・ビルクリーニング作業(日常清掃、定期清掃、中間清掃、臨時清掃)
・客室のベットメイク作業
・資機材倉庫の整備作業、建物外部の洗浄作業
・建築物内外の植栽管理作業
・資機材の運搬作業
・客室以外のベットメイク作業
・ベットメイク作業を除く客室等の整備作業
これらは付随的な従事であれば、可能となっていますが関連業務ばかりに従事することは認められていません。
また、関連業務に挙げられている通り、ベットメイク業務もビルクリーニング分野では従事が可能です。
清掃のみと思われがちですが、関連業務に関し付随的な従事である分には認められています。
3-3.特定技能ビルクリーニング分野で求められる人材とは
特定技能ビルクリーニング分野にで従事するためには、特定技能1号の取得が必要です。
特定技能1号の取得は試験により、必要な技能水準が備わっているかという点と、日本語能力が一定水準以上あるかを測ります。
そのほかの方法として、技能実習2号を良好に修了した場合、特定技能1号への移行が可能となっています。
4.特定技能1号の試験内容
在留資格特定技能1号の試験は、各分野によって定められた試験内容をボーダーライン以上で合格することで認められます。
ビルクリーニング分野は、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会が実施団体として行なっています。
ビルクリーニング分野の技能評価試験は、判断試験と作業試験の2種類があります。
4-1.判断試験
写真やイラストなどで判断する試験です。
【問題数】17問
【試験時間】20分
【出題形式】択一式
【実施方法】ペーパーテスト方式
【合格基準】満点の60%以上且つ、作業試験も満点の60%以上
4-2.作業試験
実際に作業を行い、評価を受けます。
【作業1】床面の定期清掃作業
【作業2】ガラス面の定期洗浄作業
【作業3】洋式大便器の日常清掃作業
試験時間は全て合わせて12分
合格基準は判断試験と同様で満点の60%以上、判断試験も満点の60%以上です。
4-3.日本語能力水準
日本語能力は、日本語能力試験もしくは、国際交流基金日本語基礎テストの合格が必要となっています。
日本語能力試験では、N4以上を有していなくてはなりません。国際交流基金日本語基礎テストでは、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを測るテストとなっており、これを合格することで、一定水準の日本語能力があると認められます。
5.特定技能外国人を受け入れるための企業側の要件
特定技能外国人を雇用するためには、企業側にも課される条件があり、この条件を満たしていなければ受け入れることはできません。
5-1.建築物清掃業もしくは建築物環境衛生総合管理業の登録
特定技能所属機関は、
”建築物衛生法第12条の2第1項第1号に規定する建築物清掃業又は同項第8号に規定する建築物環境衛生総合管理業の登録を受けた営業所において1号特定技能外国人を受け入れることとしている。”
とされています。
そのため、受け入れ企業では、このどちらかの登録が必須となっているのです。
5-2.支援体制の義務を果たす
建築物清掃業や建築物環境衛生総合管理業の登録のほかに、支援体制の義務を果たさす必要があります。
支援体制の義務の内容としては、特定技能外国人が日本で不自由なく暮らすために必要な支援をすることです。
具体的には、住居を確保するために必要な契約に関する支援があげられます。
5-3.特定技能協議会の加入
厚生労働省が設置する、ビルクリーニング分野の業界団体、試験実施主体、制度関係機関その他の関係者で構成する「ビルクリーニング分野特定技能協議会」の構成員になることが義務付けられています。
協議会の加入に加え、協議会において協議が調った措置を講じること。
協議会に対して必要な協力を行うこと。
厚生労働省又は、その委託を受けたものが行う調査または指導に対し必要な協力を行うこと。
これらを条件として課しています。
5-4.そのほかの条件
・特定技能外国人の雇用経緯は、直接雇用に限られています。
・治安への影響を踏まえて、治安上の問題となり得る事項を把握するために必要な措置を講じる必要があります。
・大都市圏、その他の特定の地域に過度に集中して就労することとならないようにするために措置を講じる。
これらの項目も、企業側が配慮し、措置を行うべく内容となっています。
6.ビルクリーニング分野に特定技能外国人を
特定技能外国人は、必要な知識を有しています。そのため、即戦力になりうる人材と考えられます。
また、特定技能制度では長期的に従事してもらうことが可能な在留資格となっています。特定技能1号から2号への移行も可能なため、長く企業に勤めてほしいと考える企業にとって、知識のある人材をさらに上の技術や知識を身につけて企業にとって欠かせない人材になる可能性も高いでしょう。
特定技能制度や在留資格に関して、どのようなものがあるのか詳しく知りたいという場合はぜひご相談ください。
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